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改正薬事法特集記事 (医薬品での自殺未遂の疑問)
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まず一般消費者でも分かる疑問点「医薬品での自殺未遂の疑問」について触れておくとする。繰り返しになるが、事件の概要は下記の通り。
2006年5月に当時19歳の少年が、ネット上のショッピングモール「楽天市場」の医薬品販売サイトで鎮静剤を24箱購入。ほかに2軒の店頭でも同じ鎮静剤を6箱購入し、一度に大量服用して自殺を図った。少年は、一命は取りとめたものの両足関節機能全廃の障害が残り、身体障害者等級2級の認定を受けた。自殺に用いられた鎮静剤は第2類医薬品に分類され、これまでにも自殺目的の乱用例が報告されていた。製造会社は、乱用や過量服用防止のために販売を1人1箱に限ることや、18歳未満には販売しないことを販売店に要請していた。
上記事件の薬を販売した北九州市内の薬店は年齢確認せず、24箱も1度に販売していたという。厚生労働省から連絡を受けた福岡県が行政指導し薬局は閉店、ネット販売もやめた。
万事解決と言いたいところだが、だからと言ってこの事件が、「対面式販売」では医薬品の大量購入は起こり得ないと主張する規制推進派の意見や、自殺志願者は自殺目的で医薬品を購入する場合ネット販売を利用する、とまでは言い切れない。規則を破って営業したのだから販売業者を廃業に追い込むのは自然だが、こんな事件が起こるからネット販売を規制するというのは不自然だ。
まず、2008年12月の会合でわざわざ2年も前の事件を引き出してきたか疑問だ。自殺者が2006年5月から2008年12月まで一人もいなく、まるで医薬品がネット販売されたから自殺者がでたような主張は、どう聞いていてもこじつけと言わざるをえない。
さらに、上記事件の少年は「ほかに2軒の店頭でも同じ鎮静剤を6箱購入し、」とあり、対面式である店頭販売の薬局でも、製造会社の「1人1箱に限る」という注意を無視して6箱売っていた事を実証している。しかも店頭販売なので、1人の人間が行動できる範囲内で最低2軒は医薬品を大量購入することが可能ということが容易に推測できる。また、ネット販売した北九州市の薬店は廃業に追い込まれているにも関わらず、店頭販売の薬局は一切触れられていないのも不思議である。この場合、製造会社側の「1人1箱に限る」というのは、18歳以上であれば「1人で同時に1箱全て使用しても致死量に当たらない」という意味であり、24箱売ったか、6箱売ったかという数は問題にならない。1箱を越える量を同時に服用した場合、明らかに生命の危機があると考えられる為、それを販売したネット販売した北九州市の薬店、店頭販売の薬局2店舗は同罪と言えよう。
まだあるが、医薬品による自殺はネットでの購入に限ったことではなく、起こり得ないと主張する対面式販売の薬局でも実際に起こっている。時事問題的に、今では検索エンジンで「医薬品 自殺」と検索しても上記事件の事ばかりサーチされるが、少し前までは医薬品の自殺事件の記事やニュースがいろいろ検索出来ていた。もちろん自殺目的による医薬品の大量購入は、ネット販売のみに限ったことではなく、店頭販売や薬剤師が処方したものでの事件まである。
上記のように、危険とされる医薬品を大量に売るという事は、ネット販売でも店頭販売でも変わらず起こり得ることで、その原因は「販売側のモラル」の面が大きく、その点ではネット販売も店頭販売も変わらないと言えよう。結果、上記の事件に限らず、「医薬品での自殺の危険性はネット販売でも店頭販売でも変わらない」ということになり、薬店として安全対策を軽視した販売が悲劇を招いたのであって、ネット販売だから危険というわけではない。
にも関わらず、医薬品のネット販売が大幅規制され、医薬品の店頭販売が陳列方法と解説を義務づけ、薬剤師、登録販売者または一般従事者であることが容易に判別できるよう、名札を付けるなどの措置を義務化したと定める法案は、「法案がちゃんと守られれば大丈夫」的な理想論であり、上記事件のように、ネット販売も店頭販売も両方とも、決まりさえ守っていない薬店ではまったく意味がない。情報提供は対面式で行われていても、店頭販売の「販売側のモラル」が解決されていない為、モラルのない薬店や薬剤師の大量販売による事件は減少しない。情報提供は義務付けられていても販売数量までの規定はない為、危険性を判断するのは「販売側のモラル」であるからだ。
ネット販売が規制されることにより、「改正薬事法に準じた医薬品販売を行っているネット販売業者」による、医薬品での自殺は限りなく少なくなるだろう。しかし、それは医薬品での自殺者の減少とはならないと容易に推測できる。医薬品の自殺を考えている者は「ネットでの医薬品の購入」という選択肢がなくなるだけで、店頭販売の薬店で購入する選択肢は残っている。よって、医薬品のネット販売規制をした所で、医薬品の自殺未遂がなくなることはないと断言できる。
最後に、筆者の推測になるが、厚生労働省は今回の改正薬事法によって、自殺者の絶対数が少なくなるという事は限りなく低い、という事がすでに分かっているはずである。厚生労働省は「自殺死亡統計」というものをとっており、その中には手段別という項目もある。詳細は公表されていないが、医薬品による自殺者数という人数も把握しているはずであり、自殺の中で最も多い「縊首」という手段があるため、圧倒的に低いと思われる医薬品による自殺者数を減少させたところで自殺問題の解決にはならないと考えられる。
結果、改正薬事法は、論点とされる自殺問題解決としての法案ではなく、法案成立によって利害関係の生まれる法案と推測できる。
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目次
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●改正薬事法特集記事(第一部) 2009年2月18日執筆完了
改正薬事法特集記事 (改正薬事法の概要)
改正薬事法特集記事 (販売店の利害)
改正薬事法特集記事 (厚生労働省の利害)
改正薬事法特集記事 (施行されることによって)
●改正薬事法特集記事(第二部) 2009年2月27日執筆完了
改正薬事法特集記事 (ネット販売規制の経緯)
改正薬事法特集記事 (医薬品での自殺未遂の疑問)
改正薬事法特集記事 (薬剤師の現状)
改正薬事法特集記事 (薬剤師の利害)
改正薬事法特集記事 (2009年の改正薬事法)
●改正薬事法特集記事(第三部)
改正薬事法特集記事 (これまでの薬事法の影響)
改正薬事法特集記事 (改正薬事法施行までのニュース【1】)
改正薬事法特集記事 (改正薬事法施行までのニュース【2】)
●改正薬事法特集記事(医薬品新販売制度に関する検討会)
第1回医薬品新販売制度に関する検討会
第2回医薬品新販売制度に関する検討会
第3回医薬品新販売制度に関する検討会
第4回医薬品新販売制度に関する検討会
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